アクアマン_設定に首尾一貫性がなくつまらない【4点/10点満点中】(ネタバレあり感想)

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DCコミック
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3億ドルとも言われる製作費と人気キャラを大量投入した『ジャスティス・リーグ』が全世界で6億5千万ドル(多分赤字です)しか稼がず苦戦が続くDCEUにおいて、初めて世界興収が10億ドルを突破し、批評家受けも悪くないということで本作には期待していたのですが、私はDCEU史上最低作に感じられました。映画とは自分の目で見るまでは分からないものです。

ジャスティス・リーグ_ドラマの流れが悪い【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)
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設定がかなり雑

海底人の基本設定が整理されていない

地上人と海底人のハーフであるというアーサーの優位性って、陸上への適応という点にこそ見出すべきだと思うんですよね。1998年の『ブレイド』で、ハーフバンパイアのブレイドがデイウォーカーとして恐れられていたように。しかし、本作では海底人一般の標準スペックがいまいち明確に規定されていないので、その結果、アーサーの立ち位置がよく分からないという現象が発生しています。

海底人についてはどうもいろんな種類がいるらしく、アトランナやメラは陸に上がっても地上人とまったく同じように振る舞えるのに対して、逆潜水服みたいなのを身に着けていないと陸に上がれず、これを外されると窒息しかける奴もいたりと、規則性がよく分かりませんでした。

この点、アーサーを葬りたいオームが直接手を下すのではなく地上人であるブラックマンタを刺客として利用したことや、後述するトライデント争奪戦との関連を考えると、生粋の海底人には陸上での活動に相当な制約が伴うという設定にしてしまった方がスッキリしたように思います。

アーサーの戦力設定が一定ではない

冒頭、アーサーは潜水艦を楽々持ち上げるほどの圧倒的なパワーを披露するのですが、これが海底人にとっての標準的なパフォーマンスなのか、それともアーサーに固有の能力なのかが分かりませんでした。なので、今のアーサーは他の海底人と比べて強いのか弱いのかすらよく分からず、本編中2度あるオームとの決闘でハラハラもドキドキもさせられませんでした。

また、中盤にてオームがアーサー抹殺用の最新兵器をブラックマンタに渡すというくだりがあります。通常のヒーロー映画では、いかに強いヒーローでも絶命するヤバイ兵器として緊張感を煽るべき展開なのですが、アーサーはこの直撃を受けてもピンピンしているので、結局何をやりたいんだかよく分かりませんでした。

その他、冒頭では銃や刃物による攻撃を受け付けなかったにも関わらず、終盤ではブラックマンタの刃を受けて流血するため、こちらでも設定に一貫性がなく混乱させられました。

出鱈目なトライデント争奪戦

トライデントとは

7つある海底王国の大連合を形成して地上への戦争を仕掛けようとするオームと、それを食い止めようとするアーサーという大まかなあらすじがあって、そのキーアイテムとしてトライデントなるものが登場します。

このトライデントとは、初代アトランティス王・アトランが持っていた伝説の矛であり、大連合の盟主【オーシャンマスター】の権威の象徴となるものとのことでした。このトライデントを入手することでアーサーにこそオーシャンマスターの権威が帰属することを示し、オームの野望を阻止するということが今回の冒険の大目的となります。

意外と海底人の身近にあった伝説のアイテム

これだけ重大な権威が伴うということは過去に海底人はトライデントを探し回ったはずなんですが、8000年(劇中では正確な年代が示されないので、アトランティスの生物である大怪獣ガメラの設定から推測)もの捜索で不明だったトライデントに、アーサーとメラは意外とすんなり行きついちゃうんですよね。

この点、例えばトライデントは地上にあるから今まで海底人では手出しができなかったが、海底人と地上人の両方の能力を持つアーサーならばリーチできたという話にしてくれれば腑に落ちたんですけど、サハラ砂漠の遺跡には生粋の海底人であるメラも付いて来ちゃってますからね。しかも、サハラ砂漠の遺跡も中継点に過ぎず、結局海底にあるし。海底にあるのに、なぜ今の今まで海底人はこれを発見できなかったんだろうかと不思議で仕方ありませんでした。

「この設定であれば、当然こうすべき」という形で物語が進んでいかないので、全体的にスッキリしない話になっています。

争奪戦のルールが突然変わる

トライデントのありかに到達したアーサーには最後の課題が突きつけられます。「今までトライデントを引き抜けた者はおらん!」

???

トライデントの所在する場所を突き止めることがこの争奪戦の軸だったはずなのに、ここで突然引き抜けるかどうかというエクスカリバーみたいな話に変わってしまいます。結局、この争奪戦の軸はどこにあるのよと混乱させられました。

また、これだけ勿体ぶられた割に、アーサーはすんなりトライデントを引き抜いちゃうんですよね。で、なぜ引き抜けたのかというと、海の生物と会話できたから。

???

サメや巨大なタツノオトシゴを飼い慣らして兵器化している様より海の生物とのコミュニケーション能力は海底人のデフォルトだと思ってそれまで映画を見ていたのですが、それができるのはアーサーだけだったということがようやくここで判明しました。分かりづらいって。

結局スルーされるトライデント

苦労しつつトライデントを入手したアーサーはオームの前に舞い戻るのですが、「それがどうした」みたいな感じで、結局決闘をしないと争いは収まらないんですよね。だったらアーサーはトライデントなんか探さず、格闘スキルアップの訓練をひたすらやってオームとのリターンマッチに備えていればよかったじゃんということになってしまいます。

水戸黄門の印籠みたいに、それを見せられた瞬間にさっきまで戦ってた奴らがひれ伏すような場面が必要だったと思います。
それは日本の時代劇の話じゃんと言われるかもしれませんが、例えば2004年の『リディック』にだって、リディックが玉座についた瞬間にそれまでの血みどろの争いがピタっと収まり、敵も含めその場に居た全員が跪くという場面がありました。王位継承戦とは本来こうあるべきでしょう。

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