ザ・サイレンス 闇のハンター_ツッコミどころ満載【3点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2019年 アメリカ、ドイツ)
群れで飛来して他の生き物を食い荒らす獰猛な生物がアメリカ東海岸を襲った。アンドリューズ一家は東海岸から脱出するが、彼らに安住できる場所はなかった。

3点/10点満点中_これを見るくらいなら『ミスト』を見ましょう

© 2019 Constantin Film

Netflix配信作品

本作はドイツの大手映画会社のコンスタンティン・フィルムが製作し、本国ドイツでは2019年5月16日の公開が予定されているのですが、その他の地域ではNetflixにより2019年4月10日にインターネット配信されました。劇場公開作品の配給権をNetflixが取得するという、最近よくあるパターンの作品ですね。

『クワイエット・プレイス』との関係

音を立ててはならないというルール設定に、事故で聴覚を失った娘と、本作には『クワイエット・プレイス』との類似点が目立つのですが、『クワイエット・プレイス』の撮影開始が2017年に対して、こちらの原作は2015年に出版されており、本作が『クワイエット・プレイス』をパクったということはありません。時系列的には、『クワイエット・プレイス』の方が本作をパクったと考えるべきです。

なお、本作で主演を務めたスタンリー・トゥッチの奥さんはフェリシティ・ブラント。『クワイエット・プレイス』に主演したエミリー・ブラントのお姉さんです。

監督・脚本家について

監督はカメラマン出身のジョン・R・レオネッティ

監督を務めたジョン・R・レオネッティは80年代からキャリアをスタートさせたベテランカメラマンであり、2007年の『デッド・サイレンス』以降はジェームズ・ワン監督作品を手掛けることが多くなっています。

映画監督としての経験もあり、『モータル・コンバット2』『バタフライ・エフェクト2』というヒット作に便乗したやる気ゼロの続編を監督した後、ジェームズ・ワンとの関係から『死霊館』の前日譚『アナベル 死霊館の人形』を監督し、650万ドルという製作費に対して全世界で2億4400万ドルを稼ぎ出すという大成功を収めました。

脚色は『トランスモーファー リターンズ』のシェーン・ヴァン・ダイク

本作は小説の映画化企画なのですが、その脚色作業を行ったのはアサイラムの名物シリーズ『トランスモーファー』の第二弾、『トランスモーファー リターンズ』の脚本を書き、出演もしたシェーン・ヴァン・ダイクという人物です。トランスモーファーに関わった人間という時点でほぼ信用できないのですが、一体どんな経緯でコンスタンティン・フィルムはこの人物に会社の敷居を跨がせたのでしょうか。

本作での仕事ぶりは、そのキャリアから推して測った通りでしたね。

登場人物

  • ヒュー・アンドリューズ(スタンリー・トゥッチ):建設技師。娘のボーイフレンドや進学先を気にかける良い父親。平和主義者。
  • ケリー・アンドリューズ(ミランダ・オットー):ヒューの妻。何の活躍もしない空気同然の存在。
  • アリー・アンドリューズ(キーナン・シプカ):ヒューとケリーの娘。大学進学を控えた女子高生。3年前に祖父母とともに事故に遭い、以来耳が聞こえない。
  • ジュード・アンドリューズ(カイル・ブライトコフ):ヒューとケリーの息子で、アリーの弟。武闘派のグレンに憧れている。
  • リン(ケイト・トロッター):ケリーの母で、アリーとジュードの祖母。薬の瓶を大量に持っており、何らかの重病を抱えている様子。
  • グレン(ジョン・コーベット):ヒューの高校時代からの親友にしてビジネスパートナー。未婚でヒュー一家とは家族の一員のような関係にある。武闘派タイプ。

月並みながらよくできた導入部

Netflixはアポカリプトもので溢れかえっており、月に一度は世界の終わりを見せられているような気がするのですが、本作で世界を滅ぼすのはベスプと呼ばれる凶暴なコウモリです。洞窟の調査隊が彼らの世界とこちらの世界を隔てていた岩盤を壊したことから大群が解き放たれ、地上の生き物を手当たり次第に食い荒らします。

作品数の増加とともにアポカリプトものの導入部はテンプレート化されてきており、まず主人公グループはテレビ中継により世界の異変を知り、そのうち軍用機が頭上を飛び交い始めて異変がどんどん身近に迫ってくるという黄金パターンを本作も踏襲しています。テンプレ通りなのできちんと面白いし、音を立ててはならないというサバイバルのルールもここで説明されるので、必要な情報整理もなされています。加えて、世界の危機というスケールの大きさも表現できており、月並みながらよくできた導入部だったと思います。

ぬるいサバイバル劇

意思決定過程がとてもお手軽

世界の異変を受けて主人公のアンドリューズ一家+グレンは家に留まるか離れるかという決断を迫られ、ベスプは音に集まるようだから人里は危険と判断して彼らは車に乗り込みます。

ここで重要な意思決定が簡単にまとまったことは、ちょっと勿体ないかなと思いました。意思決定はドラマの大きな山場となるものだし、「あの時、あの選択をしていなければ」という後悔が作品の重要なアクセントにもなります。これを最大限にやりきったのがフランク・ダラボン監督の『ミスト』ですね。せっかく道を分けたのだから、もっと悩んで欲しいところでした。

ゴール設定がなくただ車に乗ってるだけ

アンドリューズ一家は車に乗り込んだものの、行く当てもないままただ車を走らせているだけ。移動を伴う物語ではどこを目指しているのか、その過程で難所はどこにあるのかという整理が重要になってきます。同じくNetflixの『すべての終わり』も『バード・ボックス』も、目的地の設定はきちんとやってましたよね。本作にはそれがないので、盛り上げ所を逃しているように感じました。

ちょうどいい物件が棚ぼたで手に入る

エンジン音のする車では無理ってことで、移動手段を徒歩に切り替えて山道を移動し始めるアンドリューズ一家。サバイバルの難易度がさらに上がったかに見えたのですが、婆さんが疲れてきた丁度いいタイミングでポツンと一軒屋を発見。しかも、気難しそうな住民が「近寄ったらタダじゃおかないよ」とズドンと威嚇射撃→ベスプに気付かれて食われるというバカさ加減で、一家はこの物件を棚ぼたで手に入れました。なんじゃこの展開。

ベスプが無能すぎ

ここでベスプについてですが、やはり目のない生き物は不気味に感じるもので、『ピッチブラック』の肉食エイリアンをさらに凶悪化させたようなデザインは良かったと思います。ただし、こいつらが思いのほか無能なんですよね。

『ジュラシック・パーク』で恐竜には動いているものしか目に入らないので、動きさえしなければ鼻先にいても襲われないという設定が置かれていて「バッカだなぁ」と思ったのですが、本作のベスプもそれと同レベル。襲撃を受けても、音さえ立てなければ問題ないわけです。コウモリってソナーの要領で空間を認知しているはずなのですが。

加えて音への感度も低く、同一室内でも喋ったり動いたりしなければベスプには気付かれません。視覚がなく聴覚のみで生きている生物なのだから、呼吸音や心音にも気付くんじゃないかと思うのですが。これでは、室内から家の外の足音を聞き分けて、家族が玄関先に着く前から吠え始めるうちの犬よりも耳が悪いじゃないですか。

ドラッグストアでの攻防戦に至っては、ヒューが転がっていたモップを手繰り寄せ、ライターで先っちょに火を点けるという動作をしても気付きません。目隠しされたクロちゃんでも、あれだけの動きをされたら「なになに?」って言って気付くと思いますよ。

※ここからネタバレします。

いろいろと中途半端

婆さんの病気は一体何だったのか

一家が車で逃げることに決めた直後、ケリーは大量の薬の瓶を抱えたリンに対して「母さんはここに残ってもいいのよ」と言い、リンは「私も行くわ。でもこれは秘密にしてて」と薬の瓶をケリーのカバンに入れるというくだりがありました。また、ライターが必要になった場面でリンがこれを持っており、「まだタバコやめてなかったの?」というやりとりがあったり、車移動から徒歩移動に切り替えた際に普通ではない咳をしたりで、リンが肺を患っているような描写がいくつか見られたのですが、後半に向けての伏線らしきこれらリンの重病設定が、途中からなかったことになっています。結局、リンが何の病気だったのかも分からず仕舞いでした。

意味ありげな描写が結局なかったことにされるというのは、気持ちの悪いものですね。ちゃんとオトすか、カットするならするで、関係する一連の描写をすべてカットするかのどちらかにして欲しいところでした。

何がしたかったんだ、カルト教団

後半はカルト教団との攻防戦が中心となるのですが、このカルトが規模も目的も不明。アリーを気に入った様子で、まずは信徒としての勧誘をするのですがヒューに断られ、続いて実力行使でアリーを奪いに来るのですが、なぜそこまでして彼らがアリーを確保しようとしたのかが分からないので、まったく盛り上がりませんでした。

組織構造にも説得力がなく、騒動が起こってからさほどの日数が経過したわけでもないのに、教祖の鉄砲玉を引き受けるような熱心な信徒をすでに複数人獲得しているのは、設定的にちょっと無理がありすぎのような気がしました。音を立ててはならない世界なのだから、言葉を使えない布教活動は難儀だろうし。

謎のライフライン

人類とベスプの存亡をかけた戦いの真っただ中なのに、依然として電気は供給されているし、ネット回線も生きています。人類が滅びるかどうかという状況で、しかも音を立てればベスプに食われるかもしれない中で、それでもちゃんと働いてくれるほど、アメリカの電力会社や通信会社の従業員の士気は高いのでしょうか。

まとめ

パニックものとしてもホラーとしても突き抜けたものがなく、音を立ててはならないと言いつつも、許容範囲がかなり広いので緊張感もありません。

加えて、未回収の伏線が多くあって総じて雑な仕事という印象も持ちました。フランク・ダラボンの『ミスト』を薄めるだけ薄めたような映画なので、これを見るくらいなら『ミスト』を見た方がいいと思います。

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