マイヤーウィッツ家の人々 (改訂版)【6点/10点満点中_面白いがバームバックとしては水準作】

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(2017年 アメリカ)
3人の兄妹ダニー、マシュー、ジェーンは、芸術家である父ハロルドのお祝いのため実家に帰ってくるが、ハロルドは年老いてもなお頑固で、家族を困らせる性格に変化はなかった。子供達は幼少期に父から受けた酷い仕打ちの数々を憎んではいたものの、成人した今となっては過去を水に流す気ではいたが、ハロルドは自分の問題点については一切気に留めている様子がない。そんな中で、ハロルドが昏睡状態に陥り入院する。

©Netflix

「Netflix作品は映画か否か」、現在の映画界で巻き起こっている論争ですが、その論争に火をつけたのがカンヌ映画祭にのメインコンペティションに出品されてパルムドールを争ったポン・ジュノ監督の『オクジャ/okja』と本作でした。

感想

バームバックの十八番・一流になれなかった芸術家

ノア・バームバックは一流になれなかった芸術家を主人公に選ぶことが多いのですが、本作ではダスティン・ホフマンが演じているマイヤーウィッツの父親がこれに当たります。『イカとクジラ』の父親がもし離婚せずに老人になっていたら、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』の主人公が監督業を諦めなかったらという過去作品とは地続きの話のようにも見えるのですが、偏屈なまま歳をとった人間がどれほど醜悪であるかを徹底して描いています。

恐怖!偏屈親父

この親父さんがとにかくクソ野郎で、芸術家としては二流であるという現実を「自分は認められていないだけ」と超好都合に解釈していたり、一方で芸術家として大成した友人に対して「あいつは商売上手なだけ」と陰口を言ったり(その割に、友人経由でシガニー・ウィーバーに会わせてもらうと素直に喜ぶわけですが)、芸術方面へと進まなかった子供たちの社会的地位をまるで評価しなかったりと、自分だけの尺度で生き、何らの変化も成長もないまま老人になってしまった超偏屈人間なのです。

日常生活においても集団行動のとれない人間で、家族で野球中継を見ていても贔屓のチームが不調だと不機嫌になってテレビを消したり、息子が予約してくれたレストランへ行っても「店員の態度が気に入らない」と言って店を変えたりと、周囲への配慮というものはほぼゼロという状態です。

絶妙なのがこれをダスティン・ホフマンに演じさせたことで、もしデ・ニーロやパチーノに演じさせていれば見ていることが苦痛になるほどのインパクトを持つ親父さんになりかねなかったところですが、ホフマンが本来持つ柔らかな個性によって若干の可愛げが出ています。

そしてその可愛げこそが、家族と観客がこの親父さんに対して抱く最後の希望を繋ぎ止める役割を果たしており、突然襲ってきた病魔という試練を乗り越えることで、親父さんも家族も良い方向へと進むのではないかという淡い期待を抱かせます。終盤までは、家族のつながりを再認識して温かく終わりそうな雰囲気でドラマは流れていきます。

息子が父親に見切りをつける話

しかし、バームバックは容赦がありません。死の淵から生還したにも関わらず親父さんには何の変化もなく相変わらずの毒舌ぶりだし、子供たちの献身にもほぼ無関心。特に、父親の面倒を見てあげる気でいた長男は深く深く失望し、家族は再度離散状態となります。

この辺りは2005年の『イカとクジラ』の焼き直しではあるのですが、身内であろうが分かり合えない奴はいる、どれほどの善意や親切心を示しても響かない人間はいるという本作の締め方はより暗く陰鬱でした。長男が親父に見切りをつける場面の演出は素晴らしく、バームバックの作家性が見事に活きた作品だったと言えます。

ただし作品としては並レベル

ただし、90分程度でサクっと終わる作品の多いバームバックとしては例外的に長めの上映時間であることが裏目に出ており、大事件が起こるわけでもなく人間模様をユルユルと見せるだけの作風で2時間近い上映時間なので、かなり中弛みをしていました。また、個別には良い演技をしているものの豪華キャスト間で化学反応が起こっておらず、特にベン・スティラーとアダム・サンドラーの共演作でありながら際立った笑いがなかったという点でも残念でした。

まとめ

バームバックによる家族の考察としてはなかなか興味深く見る価値のある映画ではあるのですが、豪華俳優陣から期待されるほどの化学反応が起こっていなかったし、盛り上がり所を逃して流れていくような感覚を覚えました。もっと爆発力があれば良かったのですが。

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