ナルコス:メキシコ編(シーズン2)第10話_メキシコの『ゴッドファーザーPARTⅡ』【9点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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実録もの

いや~、面白かった。

派手な見せ場は前話で終わって、今回は天下を獲ったフェリクスの凋落が描かれるのですが、人を見ることができなかった点が最後までフェリクスのアキレス腱でした。この辺りは『ゴッドファーザーPARTⅡ』(1974年)によく似ていますね。実際、フェリクスが豪邸で一人佇む場面など、『ゴッドファーザーPARTⅡ』のマイケルを意識したかのような場面が見受けられました。

そして、個人的には『ゴッドファーザーPARTⅡ』に比肩するほど面白いドラマだったと思います。

©Netflix

あらすじ

メキシコvsコロンビア

LAで史上最大量20トン、末端価格70億ドルのコカインが押収される。これによりコカインの所有者であるカリ・カルテルは資金繰りが悪化し、グアダラハラ・カルテルへの手数料2億1000万ドルの支払も危うくなる。

カリ・カルテルがキャッシュを生み出すためには麻薬取引を回す以外に道はないが、北米へ流通させるためにはフェリクスが支配するメキシコルートを通る必要があり、パチョはフェリクスとの会談に臨む。

しかし、フェリクスは以前にパチョがガルフ・カルテルのフアン・ゲラを抱き込んで自分を陥れた件を根に持っており、今回の交渉では後のないカリ・カルテルこそが譲歩すべきと主張。メキシコを通過するコカインの半分をフェリクスに上納することを要求する。

ワンマン経営者フェリクス

カリ・カルテルの失墜を契機として、フェリクスはアメリカでの小売りを本格的に始動するつもりでいるが、最側近のアスールからはプラサのボス達との合意形成が必須であること、リスクが高いため個人的には反対であることを伝えられる。しかしフェリクスは自分の決定方針なので実行するのみと主張する。

また、自分に牙を剥いたシナロアのエクトル・パルマの処遇についても揉める。

パルマ逃亡後のシナロアを仕切っているエル・チャポからはパルマの復帰を要求されるが、フェリクスは組織を裏切ったパルマは戻せないと言う。

するとエル・チャポは、他のプラサのボスたちもパルマの復帰を支持していると返し、フェリクスは自分の知らない場所でプラサのボス達が合議していることを知る。また、最側近のアスールからもパルマの復帰を認めるべきとの口添えを受ける。

結局、フェリクスは自分を裏切ったことへの代償としてアカプルコに潜伏中のパルマの妻子を殺害させるが、フェリクスのとった非情な手段はカルテル内に衝撃を与える。

加えて、復縁しかけていた前妻マリアからも女子供までを殺したことを激しく抗議され、家から追い出される。

グアダラハラ・カルテルの崩壊

フェリクスは、プラサ内で信頼できる者が誰かを見極めるため会合を招集する。

会合でプラサのボス達はカリ・カルテルの未払金がいつ入金されるのかと聞いてくるが、フェリクスは力関係でカリ・カルテルを上回ったことこそが最大の成果と考えており、「未払金はいつか支払われるだろうから辛抱しろ」と言ってボス達を軽くあしらうのみで、カリ・カルテルからの入金があるのかどうかには関心を示さない。

次にボス達は合意形成なく変革が進んでいることへの危惧を表明するが、フェリクスは自分の構想を進めることのみを主張する。加えて、LAのコカイン摘発は自分がタレ込んだと認め、ボスたちはフェリクスの密告・裏切り体質が依然として継続していることを知る。

これを受けティフアナ・プラサはカルテルからの離脱を表明。シナロア・プラサもこれに続き、フェリクスの最側近であるアスールもカルテルを抜けてシナロアに入り、エクトル・パルマを復帰させると宣言する。そしてフアレス・カルテルもフェリクスとの関係には代償が高くつくとしてカルテルから離脱。

そしてフアレス・カルテルのアマドより、プラサのボス達がカリ・カルテルと直接交渉し、カリはフェリクスではなくプラサのボス達と取引する道を選択したという裏事情が告げられる。商売仇と部下達が手を組み、フェリクスは梯子を外されたのだった。

グアダラハラ・カルテルは解体され、各プラサが仕切る体制へと戻った。アマドは、皆取り分が確保されれば安心して商売できたにも関わらず、フェリクスの方法は不安が大きすぎて付いて行けなかったと言う。

フェリクスの終焉

組織を失ったフェリクスは誰にとっても付き合う価値のない存在となり、1989年4月に配下だったカルデローニ司令官によって逮捕される。麻薬王の逮捕であるにも関わらず、一発の銃弾も発射されなかった。メキシコ政府からは、何も喋らなければ命だけは助けると言われる。

彼の逮捕は麻薬戦争がうまく進捗していることの象徴的出来事となってメキシコ・アメリカ両政府の関係は強固なものとなり、二国間での自由貿易協定が批准された。

そして不仲だったシナロアとティフアナはグアダラハラ・カルテル崩壊を契機として和睦した。

フェリクスの未来予想図

ウォルトはメキシコ・シティで収監中のフェリクスに会いに行き、そこでメキシコの麻薬ビジネスが今後どうなっていくのかの予測を聞かされる。

それぞれ独立したカルテルとなった旧プラサは最初こそ協力し合うが、もっとも良いルートを求めて対立が始まるだろう。彼らには協力して取り分を大きくするという頭はなく、ただ恨みだけで暴れるだろう。

  • 最強であるティフアナの力が頭一つ抜け始めればシナロアとの戦争が始まる
  • ティフアナとシナロアが消耗しているうちにガルフ・カルテルが力を付ける
  • 全体のパワーバランスを握るのはフアレス・カルテル
  • フアレスのアマドがメキシコ史上最高の密売人(ナルコ)になりうる存在である

これからメキシコでは檻から放たれた野獣が暴れはじめ、血の雨が降る。その時、フェリクスによる中央集権体制の方がマシだったことを思い知るだろう。

登場人物

ウォルト・ブレスリン(DEA)

赴任先のサクラメント支局でくすぶっていたが、フェリクス逮捕を受け、いったんはレジェンダ作戦を失敗として打ち切った国務省に担ぎ出され、一転してレジェンダ作戦成功の立役者として表彰される。その後現場に復帰し、エル・パソ支局に赴任。

ミゲル・アンヘル・フェリクス・ガジャルド(グアダラハラ)

LAでのコカイン押収によるカリ・カルテルの一時的な弱体化に乗じてアメリカでの本格的な小売りに乗り出そうとするが、あまりに性急な動きに部下達からの反発が出始める。

イザベラ

パートナーだったエネディナより、今後はティフアナ・プラサがコカイン取引を仕切ると言われ、手切れ金を支払われた上で一方的に関係を清算される。その後もティフアナを拠点に細々と密輸業を続けるが、エネディナが警察に手を回して逮捕される。

アマド・カリージョ・フエンテス(フアレス)

ティフアナ、シナロアに同調してグアダラハラ・カルテルから離脱する。失脚後のフェリクスからは、メキシコ史上最高の密売人になりうる存在であると評価される。

ベンハミン・アルジャーノ・フェリクス(ティフアナ)

フェリクスの非情なやり方に不安を覚え、カリ・カルテルに直接取引の打診をし、グアダラハラ・カルテルからの離脱を決定する。

ホアキン・グスマン “エル・チャポ”(シナロア)

前話での大統領選への協力の見返りとしてフェリクスにエクトル・パルマの復帰を要望するが、これを却下されたばかりかパルマの妻子を殺される。この件でフェリクスとの確執が致命的となり、グアダラハラ・カルテルからの離脱を決定する。

パチョ(カリ・カルテル)

LAで史上最大量のコカインを押収され、コカインを流通させるためにはフェリクスが支配するメキシコルートが不可欠となり交渉に訪れるが、流通量の半分のコカインを上納せよとのフェリクスからの過大な要求で交渉は物別れに終わる。

LAでのコカイン押収はフェリクスの密告によるものではないかと疑っている。

感想

最後まで組織運営で失敗し続けたフェリクス

フェリクスが常に見ていたのはコロンビアのカリ・カルテルであり、彼らに市場を支配されているうちメキシコは中間業者に過ぎず、コロンビアの影響力を排除してアメリカ市場での小売りまでを支配してこそ、メキシコの麻薬カルテルは成功を収めることができると考えていました。

思えばシーズン1で、それまではソフトドラッグである大麻のみを扱っていたメキシコのプラサが、ハードドラッグであるコカインの取り扱いを始めた点が最初の分岐点であり、そこからフェリクスの視点は常に市場の支配でした。

あまりに強大すぎて部下達は競争相手とすら認識していなかったコロンビアのカルテルを倒し、巨大なアメリカ市場を牛耳るという壮大な野望を抱き、たった一人でこれに挑んでいたフェリクスの行動力や戦略は非常に素晴らしく、ある意味で優れたリーダーだったと言えます。

そして、彼は2度もカリ・カルテルを追い込んでいます。一度目は密輸業者マッタが逮捕されて、一時的にメキシコルートをすべて掌握した時。二度目はLAでカリ・カルテルが大規模な押収をされて資金繰りが悪化し、フェリクスのルートでコカインを大量に捌かなければ資金ショートしかけた時。カリ・カルテルを追い込んでいくフェリクスの戦略は常に優れており、毎回敵は面白いようにその方向へと導かれていきました。

しかし、カリ・カルテルのパチョは毎回フェリクスの配下に手を回し、メキシコのスクラムを崩すことでフェリクスの野望をくじいてきました。フェリクスの部下達は毎回コロンビア人がまくパンくず拾いに夢中になり、オールメキシコで大きな果実を得ようとしていたフェリクスの構想には乗らなかったのです。

人心を掌握し、外部からの揺さぶりに強い組織を作れなかったことが、最後までフェリクスの弱点でした。この辺りは、強烈なカリスマ性で仲間を引き付け、窮地に陥っても各地に協力者が居たパブロ・エスコバルとは対照的なところとなります。

らしくないヤクザ的行動で部下ドン引き

もう一つのフェリクスの欠点は、部下との間で適度な緊張関係を作れなかったことです。

その弱点がドバっと出たのが第6話で、フェリクスの権力基盤が一時的に弱ったことを知ったティフアナのベンハミンが、当時抱えていたシナロアとの抗争をやめよというフェリクスからの指示に従わず、和睦に来たシナロア幹部コチロコを殺すという暴挙に出ました。

この時、フェリクスは部下から完全に舐められており、足元を見られていました。実際、最大勢力のティフアナに抜けられては困るからと、フェリクスは彼らの行動を黙認してしまいます。そして、そのことが組織内の一時的な混乱をもたらしました。

で、その反動なのかは分かりませんが、最終話では部下に対して異常とも言える制裁を加えます。

対象となったのはシナロアのボスであるエクトル・パルマであり、彼は第7話にてフェリクスへの謀反の企てが発覚し、フェリクスからの報復を逃れて行方をくらましていました。

後任のエル・チャポからは大統領選での不正への関与の見返りとしてパルマの赦免が要望され、他のプラサのボス達も、フェリクスの最側近のアスールもパルマを復帰させよと言うのですが、突如ここでフェリクスにスイッチが入ります。謀反人を赦すことはないと組織内に知らしめねばならないと。

依然として発見できないパルマに代わり、クレジットカードの使用履歴から潜伏先を特定できていたパルマの妻子殺害を指示。ただしヤクザ内のケジメというレベルを越えて、フェリクスの人格を疑いたくなるレベルの制裁だったので、組織内に動揺が走りました。

フェリクスとしては組織内の風紀締め付けのつもりだったのでしょうが、完全にやりすぎでした。組織内の緊張感の醸成どころか、子分達ドン引きで「もうこの人の下ではやっておれんわ」という空気を決定的なものとします。

ある時はユルすぎ、ある時は締め付けすぎで、適度な温度感を最後まで掴めなかったことが、フェリクスのマネジメントの大きな欠点でした。

呆気ない幕引き

最後の会合ではフェリクスを擁護する部下、内部分裂後にもフェリクスの下に留まろうとする部下は皆無であり、見事なまでに全員が離れていきました。そして、まったく価値のない人になったフェリクスはあっさりと逮捕されます。

打倒フェリクスのためその懐に潜り込み、身の危険を引き受けてまでDEAに情報を流していたカルデローニや、部下を大勢失ってまでレジェンダ作戦を遂行してきたウォルトの苦労は一体何だったんだろうかと言いたくなるほどのアッサリ加減。

捜査とか陰謀とか関係なく、組織内での信用を失って権力が勝手に離れていくという呆気ない幕引きで、メキシコのゴッドファーザーとまで言われた男の逮捕劇なのに一発の銃弾も発射されることはありませんでした。

人を大事にしてこなかった者は、最終的に人で失敗するという教訓が込められているかのような最後でした。

それでも凄いフェリクス

ただし、刑務所に入ったフェリクスの予言は見事なものでした。

プラサの連中は基本的にアホ揃いだから、全体の成長の絵を描ける自分のようなリーダーが居なくなれば壮絶なパイの奪い合いが始まる。火種はティフアナvsシナロアであり、一時的に漁夫の利を得るガルフの台頭、慎重な姿勢をとるであろうフアレスがパワーバランスを握ることになるなど、その予測は論理的なものでした。

やっぱりフェリクスって凄い男だったなぁと思うと同時に、彼の意図を理解して部下のマネジメントを代行できる優秀な二番手さえいれば情勢は変わったんだろうなと、何だか残念に思います。麻薬王の話なんですけどね。

毎回のように述べていますが、本シーズンはマネジメントを描いたドラマであり、遠い外国のヤクザ者の話でありながら、サラリーマンの方が見ると非常に勉強になる内容となっています。

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