ナルコス:メキシコ編(シーズン2)第5話_熱すぎる主導権争い!これぞナルコス!【8点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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実録もの
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低調だった第4話が嘘のように、本作は激熱の展開を迎えます。第2話から第4話にかけての地道な交渉の末にアメリカへの密輸ルートをすべて押さえたフェリクスは、ついに部下のアマドに計画の全貌を説明し、ドラッグビジネス全体を手中に収めようとするフェリクスの大胆かつ緻密な作戦に、アマドと視聴者は震えることとなります。

しかし交渉相手はカリ・カルテルと一筋縄ではいかない相手。メキシコvsコロンビアの主導権争いは一体どうなるのか。その交渉の場では血や銃弾どころか激しい言葉の応酬戦すらないのですが、静かなる腹の探り合いには熱いものが宿っていました。

現時点でのシーズン2のベストエピソードです。

©Netflix

あらすじ

シナロア・カルテルのドラッグを追うDEA

冒頭、ウォルト達DEAのチームは内通者となったカルデローニ司令官からカルテルの内情についてのレクチャーを受け、ティフアナ・カルテルを通るドラッグにはすべて10%の税金がかけられてティフアナの取り分になっているが、シナロア・カルテルはこの課税に反発しており、ティフアナの倉庫に預けているドラッグの在庫400kgを近くトラックで回収する予定との情報を得ます。

カルデローニの言う通りにティフアナの倉庫を見張っていると、本当にシナロアのトラックが出てきました。このまま国境を越えてアメリカに密輸されるものと踏んだDEA捜査官たちは車でトラックを追跡するのですが、途中、トラックは怪しげな倉庫に立ち寄り、また発車しました。

この倉庫を怪しいと踏んだウォルトは夜が来るのを待って倉庫に潜入するのですが、その地下にはトンネルが掘られており、アメリカへの密輸の発進地がここであることを知ります。

いったん引き上げたウォルトは打ち手を考えるのですが、このまま倉庫にあるコカインを押収しても下っ端が摘発されるだけであり、カルテルの崩壊とまではいきません。そこでカルデローニから、敵対組織であるティフアナ・カルテルにトンネルの存在を密告し、シナロアとティフアナの抗争を煽ることで内部からの瓦解を狙ってはどうかとの提案があります。

部下達に反対される中でウォルトはカルデローニ案を採用し、カルデローニのルートよりティフアナにトンネルの情報が伝えられます。すると怒ったベンハミンが弟ラモンに命じてトンネルを襲撃させ、ラモンは作業員を殺害し、メキシコ側の入り口を手りゅう弾で破壊します。

襲撃と殺害の一部始終を倉庫の向かいの建物から観察していたDEA捜査官たちは、目の前で繰り広げられる殺戮と、これから始まるであろう激しい抗争に動揺を隠せないのでした。

コカイン密輸ルートを作り上げるイザベラとエネディナ

前話ラストで家族に秘密でイザベラと手を組んだエネディナは、さっそくアメリカへのコカイン密輸ルートを作り始めます。彼女はサンディエゴの人材派遣会社をM&Aし、越境通勤しているメキシコ人労働者を運び屋として使うことにするのでした。

その結果、一日当たり200kgの輸送ルートの構築に成功し、現状調達しているよりも多くのコカインを運べるようになったことから、イザベラはコロンビアに供給量の増加を求めることにするのでした。

カリ・カルテルとの交渉にのぞむフェリクス

フェリクスはアマドを伴ってカリ・カルテルとの交渉のためパナマへと向かいます。その機中でアマドに説明されたフェリクスの構想は以下の通り壮大なもので、この大胆な計画をたった一人で進めていたフェリクスの実力に、アマドは息を飲みます。

  • マッタが逮捕された今、コロンビアからアメリカへのコカインの密輸経路はフェリクスが握っている。
  • これまでメキシコは中間業者に過ぎなかったが、今後は流通から小売りまでを行い、コロンビアをただの供給業者にするつもりである。
  • コロンビアから空輸されるコカインはフアレスでいったん降ろし、そこからアメリカへ輸出するというルートを作る。
  • 今後、フアレスの空港を北米のコカイン流通のハブにする予定であり、そのためにアマドには滑走路建設を急がせていた。

こうして、カリ・カルテルに対する強い交渉力を持ってフェリクスは会談にのぞむのですが、アマドと並ぶ物流のキーパーソンであるガルフ・カルテルのフアン・ゲラが会場に現れません。

するとカリ・カルテルのパチョはフェリクスの腹をすべて読み切った顔をして、フアン・ゲラとカリ・カルテルは独自の提携を結んだと伝えます。

コロンビアの密輸経路をすべて寸断した上でメキシコが物流を牛耳るという作戦でいたフェリクスとしては、アメリカへのルートを持つフアン・ゲラがコロンビアに付いたとなれば交渉の切り札を失った状態となり、二の句が出て来なくなりました。

パチョは、空路を牛耳りたいフェリクスが同業者であるマッタを逮捕させたことを見抜いたような素振りで話を続け、必要ならばアマドにも手を回すかのような揺さぶりをかけます。

交渉に完全に敗北したフェリクスは、その場を取り繕うためにコカイン供給量の増加を求めるのですが、それは現在のカルテルが捌ける量を越えており、仕入れたところでどう運ぶつもりなのかとアマドからも責められます。

ラスト、メキシコに戻ったフェリクスは何者かからの銃撃を受け、何とか命拾いはしたのですが、身に危険が迫っていることを知ります。

フアン・ゲラのとんだタヌキ親父ぶり

フアン・ゲラは、第2話でフェリクスの同盟に入ることにしたガルフ・カルテルの長です。

フェリクスは空路とフアン・ゲラの持つルートの両方を押さえたことでメキシコ人による麻薬ビジネスの支配が確立すると考えていたのですが、成功を手にした途端に仲間を売った過去のフェリクスの行動を知っていたフアンは、最終的にカリ・カルテルとの同盟を結びました。

なぜ、メキシコで絶大な権力を持つフェリクスを裏切ることができたのか。それは、表の世界の権力者が入れ替わったためでした。

フェリクスの政治力を支えていたのは国防大臣でしたが、義理の甥のスノがDEAに逮捕されたことでカマレナ捜査官殺害への関与をアメリカに知られることとなった国防大臣は、与党内での権力を失っていました。

代わりに次期大統領候補に躍り出たのが財務大臣でしたが、この財務大臣は少年期よりフアン・ゲラと親しく、思いがけず表の政治力も手にしたフアン・ゲラはフェリクスに対して優位な立場をとれるようになったというわけです。

登場人物

ウォルト・ブレスリン(DEA)

前回よりカルデローニ司令官が内通者となり、カルデローニからの密告に従ってドラッグ300kgを積んだシナロア・カルテルのトラックを追跡している。

ミゲル・アンヘル・フェリクス・ガジャルド(グアダラハラ)

前話までで空路とアメリカへの販路をすべて押さえたフェリクスは、それまで威圧的な交渉をしてきたカリ・カルテルとの再交渉にのぞみ、今度はこちらの要求を聞かせるつもりでいる。

イザベラ

エネディナと組んでコロンビアから仕入れたコカインのアメリカ国内への密輸ルートを構築している。

アマド・カリージョ・フエンテス(フアレス)

フェリクスと共にパナマへ向かい、カリ・カルテルとの交渉に参加する。

ベンハミン・アルジャーノ・フェリクス(ティフアナ)

シナロア・カルテルが麻薬密輸用のトンネルを掘っているとの密告を受けて激怒し、弟ラモンに命じてトンネルを襲撃させる。

ホアキン・グスマン “エル・チャポ”(シナロア)

ティフアナの倉庫に入れていたコカインの在庫をすべて引き取り、トラックで輸送する。その後、トンネル作業中にメキシコ側のトンネルをラモンに破壊され、命からがらアメリカ側の小屋へと逃げ延びる。

パチョ(カリ・カルテル)

パナマでのフェリクスの交渉にのぞむが、フェリクスの作戦はすべて見抜いた上で、麻薬密輸の要であるガルフ・カルテルのフアン・ゲラにはすでに手を回していた。

感想

頭良すぎるぜ!フェリクス

アメリカへのすべての密輸ルートを押さえた上で、これまで麻薬ビジネスを仕切って来たコロンビアを退場させ、これからはメキシコが麻薬ビジネスを牛耳る。

部下達がコロンビアから仕入れたコカインをどう運ぶかで血眼になっている中で、フェリクスだけはゲームのルール自体をひっくり返すことの算段を付けており、たった一人で陰ながらすべての手札を準備していたことが明かされます。

第一話のパーティでアマドにフアレスの滑走路建設を急げと指示した理由も、フアレスをハブ空港にするという大きな計画があったためで、彼の意図がすべて明らかになり、やってきたことがすべて重なったことへの感動がありました。

ここまでのビジョンを描き、誰にも言わずにたった一人で進めてきたフェリクスは頭良過ぎでしょ。この才能を違法ビジネスではなく合法でビジネスで使えば良かったのにと思うのは私だけでしょうか。

コロンビア人はもっとうわてだった

フェリクスの話を聞かされるアマドも私達も、その計画は完璧でカリ・カルテルはこちらの言うことを聞かざるを得なくなるだろうと思ったのですが、カリ・カルテルは更にうわてでした。

おそらくもうひとつの密輸業者マッタが逮捕された時点でフェリクスの腹を読んでおり、物流のキーパーソンであるフアン・ゲラに事前に手を回して、フェリクスの目論見を潰しておいたのです。

まさかそんな逆転あるかと呆気にとられたと同時に、メキシコvsコロンビアの目まぐるしいパワーゲームには興奮させられました。血こそ流れていないものの、そこでは激しい戦いが繰り広げられているのです。

あらためて考えれば、無印ナルコスで描かれたコロンビアはメキシコ以上のカオスであり、そんな中を生き延びて頭角を現したカリ・カルテルを出し抜くことなど、容易なことではありません。やっぱコロンビアは侮れないわと思ったと同時に、もう一度無印ナルコスを全部見返したい気持ちになりました。

加えて、この敗北はフェリクスの弱点が依然として克服されていないことの表れでもありました。仕組みを作ること、損得勘定で人を動かすことは得意だが、人心までを掌握し、構成員達に固い忠誠心を抱かせ、外部からの揺さぶりに強い組織作りは依然として不得意なままなのでした。

ホルヘ・サルセド再登場!!

そんなフェリクスvsパチョの会談の場となるパナマに、見かけた顔が現れます。彼の名は警備主任ホルヘ・サルセド。無印ナルコスシーズン3に登場し、DEAへの内通者として活躍したあの男です。

悪事に加担していることに悩み、家族を危険に晒してまで正義の密告を続けた男の中の男にして、全シリーズ中でもおそらく最高潮の盛り上がりを見せたシーズン3第9話の主人公として、ナルコスファンの心に深く刻まれたキャラクターでした。

まさかこんなところでお見掛けするとは思わなかったので、驚きと喜びで胸がいっぱいになりました。このシリーズ、ファンサービスも何気に充実していますよね。

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